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自然葬とは?注目の埋葬形式を種類・費用・流れでわかりやすく解説

自然葬とは?注目の埋葬形式を種類・費用・流れでわかりやすく解説

「自然葬って一体何のこと?」

「自然葬の種類や費用相場が知りたい」

終活を考え始めるなかで、埋葬方法や費用について漠然とした不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。

本記事では、新しい埋葬の形として注目される「自然葬」について、その種類や費用、具体的な流れまでを分かりやすく解説します。

あなたやご家族にとって最適な供養の形を見つけ、納得のいく選択をするための一歩にしてください。

自然葬とは?

自然葬とはお墓を使わずに、遺骨や遺灰を海や山といった大自然に還す埋葬方法の総称です。

主に樹木葬や海洋葬、散骨などが挙げられます。

現在の日本では埋葬が主流ですが、購入したお墓の種類に関する2025年の調査によると、樹木葬が48.5%と約半数近くを占めており、自然葬のニーズも徐々に高まってきています。

【参照】【第16回】お墓の消費者全国実態調査(2025年)霊園・墓地・墓石選びの最新動向

従来のお墓が「代々受け継ぐこと」を前提としているのに対し、自然葬は「一代限りで完結する供養」の形といえるでしょう。

自然葬が注目されている理由

自然葬が注目されている理由

近年、自然葬が多くの人から選ばれるようになった背景には、大きくわけて2つの要因が考えられます。

少子高齢化や核家族化の進行

1つ目の理由は、少子高齢化や核家族化の進行です。

かつては「亡くなったら先祖代々の墓に入る」考え方が一般的で、お墓は子孫が受け継ぐものでした。

しかし、お墓の後継者不足が深刻化しており、子どもや孫に管理の負担をかけたくないと考える人が増えています。

この結果、お墓を必要としない自然葬が徐々に広まってきました。

お墓に対する価値観の多様化

また、お墓に対する価値観の多様化も理由の1つです。

個人の生き方や考えを尊重する風潮が強まり、「最後は思い出の海に還りたい」「緑豊かな木々の下で眠りたい」といった、自分らしい最期を望む人が増えました。

自然と一体になるという自然葬の考え方が、こうした人々のニーズと合致し、広く支持を集めているのです。

自然葬の種類

自然葬の種類

自然葬には、遺骨を還す場所や方法によっていくつかの種類があります。

主な種類は以下の5つです。

  • 樹木葬
  • 海洋葬
  • 空中葬
  • 宇宙葬
  • バルーン葬

樹木葬

樹木葬は、墓石の代わりに樹木や草花を墓標として遺骨を埋葬する方法です。

霊園などが管理を担うケースが多く、手をあわせる対象がありながら、遺族の管理負担を軽減できるため人気があります。

樹木葬は、立地によって大きく2つのタイプに分けられます。

1つは都市部近郊の霊園などにある「公園型」で、シンボルツリーの周りに複数の家族の遺骨を一緒に埋葬するタイプが主流です。

もう1つは、山のなかに埋葬する「里山型」で、公園型よりも自然に近い状態で埋葬できます。

ただし、里山型は季節によって景観が大きく変わる場合があります。

緑が美しい時期だけでなく、葉が落ちる冬の時期にも見学に行くと、後々のイメージとのギャップを防げるでしょう。

いずれのタイプも、墓地として認可された場所にのみ埋葬が可能です。

海洋葬

海洋葬とは、パウダー状にした遺骨を海に撒く埋葬方法です。

「海は生命の起源」といったイメージから、母なる自然に還るという考え方に共感し、海洋葬を選ぶ人が増えています。

一般的には、船で沖合まで出て散骨セレモニーを行うため、海が好きだった方に人気です。

また、すべての遺骨を散骨すれば、散骨後はお墓の維持管理は不要になります。

ただし、どこでも散骨できるわけではありません。

海水浴場や漁場の近くを避け、条例やガイドラインに沿って、周囲に配慮した場所を選ぶ必要があります。

散骨方法は一家族で船を貸し切る「個別散骨」、複数の家族と乗りあわせる「合同散骨」、業者に散骨を任せる「委託散骨」があり、それぞれ費用や特徴が異なります。

空中葬

空中葬は、ヘリコプターや小型飛行機などの航空機を使い、上空から海上に向けて散骨する方法です。

「大空から家族を見守りたい」「自由に飛び立ちたい」といった故人の願いを叶える埋葬方法として選ばれています。

思い出の場所の上空を旋回するなど、故人を偲ぶための特別なフライトも可能です。

空中葬では陸地への散骨は避け、海上で行うのが一般的です。

故人の遺志と遺族の想いを形にできる、ロマンのある供養方法と言えるでしょう。

宇宙葬

宇宙葬は、遺灰を納めたカプセルをロケットで宇宙空間へ打ち上げる、壮大なスケールの散骨方法です。

宇宙葬にはいくつかのプランが存在します。

たとえば、人工衛星に遺灰を搭載して地球の周回軌道を回り、最後は大気圏に突入して燃え尽きるプランは、流れ星のように最期を飾るロマンチックな方法です。

ただし、ロケットの打ち上げは天候に左右されやすく、延期や失敗のリスクがともないます。

また、打ち上げの機会も限られており、希望のタイミングで実施できない可能性も考慮しておく必要があります。

バルーン葬

バルーン葬とは、パウダー状にした遺灰を直径2メートルほどの大きな風船に入れ、大空へ放って散骨する方法です。

地上から多くの参列者とともに見送れるのが特徴で、航空機をチャーターする必要がありません。

風船は上昇すると、気圧の変化で自然に破裂し、遺灰が高い場所から飛散します。

ただし、風船に搭載できる遺灰の量には限りがあるため、必然的に「分骨」が前提となります。

すべての遺骨を散骨したい場合には不向きなため、残りの遺骨の供養方法をあらかじめ決めておきましょう。

自然葬のメリット

自然葬には、従来のお墓にはない以下のようなメリットが存在します。

  • お墓の維持・管理がいらない
  • 墓石を購入するより安い
  • 宗教・宗派を問わない
  • 故人の意志を尊重できる
  • 自然環境に優しい

まず、お墓の維持管理が不要なため、子孫に墓守の負担をかける心配がありません。

また、高額な墓石を購入する必要もないため、費用を大幅に抑えられます。

自然葬は特定の宗教や宗派に縛られないため、無宗教の方や自由な供養を望む方にも適しています。

さらに、「最後は自然に還りたい」といった故人の希望をそのまま叶えることも可能です。

墓地開発による環境破壊の心配もなく、地球に優しい供養方法と言えます。

自然葬のデメリット

多くのメリットがある一方で、自然葬には以下のような注意すべき点も存在します。

  • 従来の供養ができない
  • 遺骨が残らない
  • 親族や周囲から理解を得にくい

自然葬は墓石を持たないため、従来のお墓参りのように手をあわせる対象がなくなります。

また、一度散骨してしまえば遺骨を取り戻すことは不可能です。

「やはりお墓を建てたい」と後から思っても、元に戻せない点はデメリットと言えます。

さらに、こうした新しい埋葬方法に対して、親族のなかには抵抗を感じる人がいるかもしれません。

「お墓があってこそ供養だ」といった考えを持つ人もおり、事前に十分な話し合いをしないと、後々トラブルに発展する恐れがあります。

一部を分骨して手元供養と併用するなど、全員が納得できる方法を慎重に探すようにしましょう。

自然葬の流れ

自然葬の流れ

実際に自然葬を行う場合、どのような手順で進めるのでしょうか。

一般的な流れは以下の通りです。

  1. 自然葬の形式を決める
  2. 業者を選ぶ
  3. 葬儀・火葬を実施する
  4. 粉骨する
  5. 埋葬・散骨する

1.自然葬の形式を決める

まず、樹木葬や海洋葬など、数ある種類の中からどの形式にするかを決めます。

故人の遺志を尊重するのはもちろんですが、遺族全員が心から納得できる方法を選ぶことが重要です。

ただし、自然葬は比較的新しい供養の形であり、すべての人に受け入れられているわけではないのが実情です。

後々のトラブルを避けるためにも、家族や親族と十分に話し合い、納得のいく決断をしましょう。

2.業者を選ぶ

希望する自然葬の形式が決まったら、実施してくれる専門の業者や霊園を探します。

海洋散骨や樹木葬など、それぞれの分野で実績のある業者を選びましょう。

信頼できる業者を見極めるためには、複数の業者から資料を取り寄せ、見積もりを比較検討することが重要です。

プランの内容や費用に含まれるサービス、追加料金の有無などを細かく確認し、疑問点や不安な点は契約前に解消しておきましょう。

3.葬儀・火葬を実施する

業者との契約後は通常の葬儀と同様に、お通夜や告別式、火葬を執り行います。

火葬後、遺骨は骨壺に収められ、遺族に引き渡されます。

この際、火葬場で「埋葬許可証」を忘れずに受け取りましょう。

埋葬許可証は、樹木葬で遺骨を埋葬する際に必要不可欠です。

海洋葬や空中葬の場合は公的な書類は不要ですが、業者によっては提示を求められる場合もあります。

また、遺骨の一部だけを自然葬にする「分骨」を実施する場合は、「分骨証明書」も併せて発行してもらいましょう。

4.粉骨する

火葬後には、自然に還りやすいように遺骨をパウダー状に砕く「粉骨」が必要です。

とくに、散骨を実施する場合は、遺骨とわからないように2mm以下の細かさにする必要があります。

粉骨作業は専用の機械がないと難しく、精神的な負担も大きいため、専門の業者に依頼するのが一般的です。

多くの自然葬プランには粉骨サービスが含まれていますが、オプションの場合もあるため注意しましょう。

5.埋葬・散骨する

すべての準備が整ったら、該当する場所で埋葬・散骨を実施しましょう。

樹木葬の場合は、契約した墓地へ遺骨と「埋葬許可証」を持参し、定められた手順で納骨します。

海洋葬や空中葬など散骨の場合は、指定された集合場所へ遺骨を持参し、船や航空機に乗り込み実施します。

散骨後には、散骨した日時や場所が記された「散骨証明書」が業者から発行されるため、大事に保管しておきましょう。

自然葬の費用相場

自然葬の費用相場

樹木葬の費用相場は、埋葬方法によって変わります。

一本の樹木に対して他の家族と一緒に埋葬するタイプであれば、10万円〜20万円程度です。

しかし、一家族で一本の樹木を使うタイプでは、20万円~80万円以上になる場合もあります。

海洋葬の費用相場は、船の貸し切り方で変動します。

複数の家族と乗りあわせる合同散骨は10万円〜20万円程度、家族だけで船を貸し切る個別散骨は20万円〜40万円程度、業者に散骨を委託する場合は5万円〜10万円程度が目安です。

空中葬は航空機をチャーターするため30万円〜60万円程度で、宇宙葬となると100万円以上かかる場合もあります。

こうした費用に加え、粉骨料やお花代、現地までの交通費などが別途必要になるケースもあるため、総額を事前に確認しておきましょう。

まとめ

ここまで、新しい供養の形である自然葬について、種類や費用、流れを解説しました。

  • 自然葬は墓石を使わず、遺骨を海や山などの自然に還す埋葬方法
  • 後継者不足や価値観の多様化を背景に、注目を集めている
  • 樹木葬や海洋葬など種類が豊富で、故人や遺族の希望に沿った選択が可能
  • お墓を建てるより費用を抑えられ、維持管理の負担がない点がメリット

お墓の継承や費用に関する不安を解消し、故人らしい最期を迎えたいと考える方にとって、自然葬は魅力的な埋葬方法といえます。

この記事で紹介した自然葬の種類や流れを参考に、ご家族の希望に沿った埋葬方法を見つけてみてください。

自然葬とは?どんな種類がありますか?
自然葬は、お墓を建てずに遺骨・遺灰を自然へ還す埋葬方法の総称です。主な種類は次の5つです。

  • 樹木葬:墓石の代わりに樹木・草花を墓標にして埋葬(公園型/里山型。いずれも墓地として認可された場所のみ可)。

  • 海洋葬:粉骨した遺骨を海へ散骨(個別散骨/合同散骨/委託散骨)。海水浴場や漁場近くを避け、ガイドラインに配慮。

  • 空中葬:航空機から海上へ散骨。思い出の上空を旋回するなど演出も可能(陸地は避ける)。

  • 宇宙葬:遺灰カプセルをロケットで宇宙へ。打ち上げ延期等のリスクあり。

  • バルーン葬:遺灰を大型風船に入れ上空で破裂させ散骨(分骨が前提)。

自然葬の費用相場はどのくらい?

  • 樹木葬:共同使用タイプで約10万〜20万円、一本を一家族で使用するタイプは20万〜80万円以上

  • 海洋葬:合同散骨10万〜20万円/個別散骨20万〜40万円/委託散骨5万〜10万円

  • 空中葬:おおむね30万〜60万円

  • 宇宙葬100万円以上が目安。


※粉骨料・花代・交通費などが別費用となる場合があります。総額とプラン内訳を事前に確認しましょう。
自然葬の一般的な流れと注意点は?

  1. 形式を決める(樹木葬・海洋葬など)— 家族・親族で十分に話し合い、分骨の有無も検討。

  2. 業者選定— 複数社から資料・見積を取り、プラン内容/追加費用の有無を比較。

  3. 葬儀・火葬— 火葬後に遺骨を受領し、埋葬許可証を忘れずに受け取る(樹木葬で必須)。

  4. 粉骨— 散骨は2mm以下の粉骨が基本。多くは業者へ依頼。

  5. 埋葬・散骨を実施— 樹木葬は認可墓地で納骨、散骨は指定地点で実施。散骨証明書が発行されることが多い。


注意点:遺骨は戻せない/従来の墓参ができないため、親族の理解を得ることが大切。必要に応じて手元供養との併用も検討しましょう。

この記事の監修者

株式会社Aクルーズ 

代表取締役 天井 十秋

散骨や粉骨などご遺骨のプロとして葬送事業を10年以上行っている経験とノウハウで、延べ1500名様以上の供養に携わってきた。散骨業の健全化も図るため、散骨協会の理事も務める。

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